研究概要 |
各種のヌクレオシド糖鎖部をエナンチオ制御下に形成させ得るキラル合成素子として2種のビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を持つ単位1および2を想定し,それぞれを効果的に合成する手法の開発ならびに実用的活用という2点から合成研究を行った. 1の合成については入手容易なジシクロペンタジエンをまずマンガン(III)トリアセテートにより酸化してexo-アセテート(3)とし,ついでリパーゼ存在下の加水分解条件での分割,ならびにアセテート(3)より得られるラセミアルコール(4)のトルエン中リパーゼ存在下イソプロペニルアセテートによるアシル化分割のそれぞれを経由するキラル体の合成法を開発した. さらにWharton転位反応を用いる両対掌体間の相互反転法(enantiomerization)も見出した. 一方,2についてはベンゾキノンから2工程で大量に得られるメソ型対称性を持つendo-ジオール体(5)がリパーゼ存在下アセトニトリル中酢酸ビニールによって高収率かつほぼ完全な選択性で不斉アシル化非対称化が起り(-)-モノアセテート体(6)が得られることを見出した.ピバロイル化後,脱アセチル化することによって実質的に対掌体として機能する(+)-モノピバレート体(7)にも変換した. 前者から抗ウィルス性ヌクレオシドaristeromycinおよびneplanocin-Aのカルボサイクリックフラノース部中間体,後者からサイクリトールconduritol Cおよびeutypoxide Bのエナンチオ制御合成を達成した.
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