研究概要 |
[1]複合標識オリゴヌクレオチドによるRNAの核磁気共鳴の手法の開発 安定同位体標識されたリボソームRNAをリボヌクレアーゼT_1あるいはT_2をもちいて加水分解し、得られた消化物をカラムクロマトグラフィーによって分離精製することによって,4種のモノヌクレオチドおよび数種のジヌクレオチド,トリヌクレオチドを得た.これらの分子を用いて,各^<13>C,^<15>N核の化学シフト,および^1H-^<15>N,^1H-^<13>Cあるいは^<13>C-^<15>Nのスピン結合定数を決定した.また,これらの値に基づいて,異核種多次元(2次元,3次元)NMRの測定に成功している. [2]標識tRNAの立体構造解析 ^<15>N標識を行なった大腸菌のtRNA^<Ile>をもちいて,これを認識するイソロイシルtRNA合成酵素との相互作用を解析することに成功した.これらの複合体は分子量が14万を超える巨大なものであり,安定同位体標識NMR法がこのような系にも有効であることが明かになった. [3]RNA分子間の相互作用の解析 遺伝暗号の解読過程において,RNA分子間の相互作用--すなわちコドンとアンチコドンの対合--が極めて重要な役割を果たしている.この相互作用を解析するために,安定同位体標識NMR法を導入することを試みている.このため,tRNAのアンチコドンの前後の配列を化学合成によって作成した.一方,[1]で調製した[^<13>C,^<15>N]Upを原料として,[^<13>C,^<15>N]pUpを酵素的に調製した.現在,これらのユニットを連結し,アンチコドン1字目に標識ウリジン残基をもつアンチコドンアームを作成中である.一方,このアンチコドンに対応するコドン(4種類)も化学合成によって調製しており,これらとアンチコドンアームとの相互作用を解析する予定である.
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