研究概要 |
著者は、炭素環オキセタノシンGを合成し、これがアシクロビルに匹敵する抗ヘルペス作用をもつことを見いだしたので、シクロブタン環に芳香環やヘテロ環を導入した化合物を合成し、生物活性を調べることを計画した。まず、シス-トランス-2,3-ビス(ヒドロキシメチル)-1-シクロブタノールをシクロヘキシリデン化して1位及び2位の水酸基を保護した後、残った3-ヒドロキシメチル基をPCCで酸化して3-ホルミル体とし、臭化フェニルマグネシウムを反応させて3-ベンジルアルコール体をジアステレオマー混合物として得た。引き続き、ラネーニッケルによる還元、酸触媒下での脱保護、トリチル化により得られる1-ブタノールを光延反応により6-クロルプリンと縮合した後、液体アンモニアで処理して3′-デオキシ-3′-フェニル炭素環オキセタノシンAを得た(7行程の通算収率24%)。次にトランス-2,3-ビス(トリチルオキシメチル)-1-シクロブタノンを臭化フェニルマグネシウムと反応させて(Z)-1-ヒドロキシ-1-フェニル体((Z)-異性体)を89%の収率で、また(E)-異性体を9%の収率で得た。この結果は、フェニルイオンが立体障害の少ないトランス側からカルボニル炭素を攻撃したことを示唆する。次に(Z)-異性体をラネーニッケルで還元し、引き続き脱保護すると目的物トランス-トランス-1,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-フェニルシクロブタンを得た。一方、(Z)-異性体を10%パラジウム炭素で還元し、脱保護するとフェニル基が反転したトランス-シス-異性体が得られた。 以上のようにアルール炭素環オキセタノシン類の合成経路を確立したが、今後、Grignard試薬として臭化複素環マグネシウムを用いてデアザ炭素環オキセタノシン類を合成する。
|