研究概要 |
・TSK(terrace-step-kink)描像にもとづきvicinal surfaceを紐状ステップの多体系とみなし,統計力学的に調べた。単一ステップのゆらぎ幅の二乗平均<W^2(y)>はyをステップに沿った距離とし,ステップ密度をrhoとして,yが十分に大きいところで漸近的に<W^2(y)>〜A(rho)lnyであることが理論的に示された。ここで係数A(rho)はfree fermionモデルではA(rho)=(pirho)^<(-2)>となる。 ・<W^2(y)>と表面高さ高さ相関関数との一般的関係を表面張力波モデルにより示した。この関係式により結晶平衡形のファセット端におけるユニバーサルなとびと<W^2(y)>のユニバーサルなふるまいとの関係が明らかにされた。 ・弾性力によるステップ間相互作用がある場合,相互作用係数をgとしてSutherlandモデルの厳密解より,A=A(rho,g)を厳密に得た。すなわち,ステップゆらぎ幅の観測から,微視的な相互作用係数gを実験的に得る方法を開発した。 ・free fermionモデル,SOS(solid-on-solid)ステップモデルについてステップゆらぎ幅のモンテカルロ計算を行い,rho→0でのユニバーサルなふるまいが確認された。free fermionモデル多体系では,高い精度で理論値と一致した。厳密に解けない例としての,SOSステップ多体系についてはrho≠0でA(rho)=(pirho)^<-2>・f(rho)としたときのf(rho),すなわち,ゆらぎ幅のステップ密度依存性が求まった。 ・2成分定比化合物におけるステップ張力を,モンテカルロ計算や実験観測を行うことを考え,微視的なキンク・エネルギー,ステップエッジ・エネルギーを考察した。さらに,有限温度でのステップの形状をランダムウォークとみなし,異方的ステップ自由エネルギー,2次元結晶平衡形,ステップ・スティフネスおよびステップ・エントロピーを計算した。
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