研究概要 |
今年度は,これまでに得られた成果を基にして,抽象化に基づく類推を用いた複数領域からの知識獲得の実現に向けて研究を進めてきた.知識は論理プログラムによって表現されると仮定し,定義が完結している論理プログラムを一つの領域とした.複数領域からの知識獲得を実現するために,複数の領域の一部分から対象領域の知識を類推する方法についてモデル化を行い,実験システムを計算機上に実現した. 類推を実現するために,抽象化過程を二つの過程,プログラム変換と制約の汎化に分解した.プログラム変換は,プログラムの意味を変更することなく,プログラム中の制約を抽出する過程である.抽出した制約を汎化することによって,抽象化図式と呼ばれる抽象知識が構成される.抽象化図式が構成されれば,対象領域の制約の同定と制約の汎化によって,対象領域の知識が獲得される.対象領域の制約の同定は,仮説推論の手法を用いることになるが,プログラムの停止性が仮説推論の制御に必要となるので,線形被覆プログラムと呼ばれる停止性の証明されているクラスに対象を限定した.この限定によって,証明のベースとすべき事実集合が有限となるので,すべての可能な仮説を求めることができる.一つの仮説を選択し,最小汎化することによって,一般的な制約を求める.これらの制約はプログラム変換によって埋め込むため,得られる知識の中には中間仮説は現われない.この基本枠組に従い,領域全体を抽象化するのではなく,領域の一部から抽象化を行い,抽象化された知識の組合せを具体化することによって,複数領域からの知識獲得が実現される. 以上の知識獲得モデルに基づいて,計算機上に実験システムを構築し,類推によってプログラムが学習されることを確かめた.
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