研究概要 |
本年度の研究では,最終年度でもあるため研究課題のテーマ全般についてまとめることも行ないながら研究を行ない,以下の成果を上げた. (1)確率的挙動を示す学習アルゴリズムについて,特にkラベル空間を学習する問題について研究し,そのための基礎的な解析手法をまとめた.これにより,概念が最初からk種ある場合の学習に必要な例の数について,タイトな限界を与えることができた.これは,従来の正負2種ラベルを組み合わせてk(>2)種を表現するのより直接的でより改善された限界を与える.また,学習の複雑度の尺度としてkラベル空間の主細分関数を定義し,その重要性を指摘した. (2)関連した確率的学習でよく用いられる最近点探索の手法に関連したkボロノイ空間の複雑度を調べ,このような対象空間を確率的に学習する際の主細分関数を評価した.具体的には,分散に基づいたkクラスタリング問題に対して,初めてこれを学習するのに必要な例の数がkに関して線形であることを示した.さらに,その応用としてクラスタリングにおける学習問題に対して効率的な確率的挙動を示すアルゴリズムを与えた. (3)確率的な学習アルゴリズムでは,どうしても近似学習になる点に着目し,幾何概念の学習の際に付加情報がある場合を考え,それが幾何概念の質問による正確な学習につながる問題,付加情報が十分でない場合は近似的に学習する問題を考えた.これらは,3層のネットワーク関数において,各素子の関数として線形関数,乗算関数,最大値(あるいさ最小値)関数,しきい値関数を組み合わせたものが幾何概念に対応し,その幾何構造を用いることにより得られるものである.具体的には,ニューロコンピューティングに関係した幾何概念の内,凸多面体の学習,超平面集合の質問による正確な学習,超平面集合による空間の分割の近似的学習が可能であることを示した.
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