研究概要 |
本研究では,従来の知識工学において用いられている知識の記号表現を補完するものとしてイメージ表現を考え,記号とイメージを統合的に取り扱い得るメンタルモデルの学習について考察した. 1.人間の図的表現理解プロセスのモデル化 ある程度複雑な図的表現を,人間が意味があると考えるような部分図形に分解し記述するアルゴリズムとして,2値の領域図形に対する手法を2種類開発した. 2.自然言語理解に必要なイメージ表現 本考察では,自然言語処理を対象として,イメージ表現の必要性,必要なイメージ表現のモデル,記号表現との相互作用について研究した.具体的には,2次元実数座標系上の式集合を表現媒体に導入したイメージ的対象世界モデルを用いて中学技術教科書の機械機構動作説明文を理解する枠組について検討した. 3.エキスパートシステム(ES)における知識獲得とイメージ表現 本考察では,ESにおける知識獲得の問題を解決するために,イメージ表現が有効であることを論じた.このようなイメージ表現を構成し,その有効性を確かめるところまでは到達できなかったが,イメージ表現がESにおける知識獲得のどのような局面において必要とされるかについて有用な知見が得られた. 以上のように,本研究では,2.で考察したイメージ的対象世界モデルを知識表現の核とし,1.で図形分解手法によるイメージ的対象世界モデルにおける図形プリミティブの獲得,また,3.で故障診断ESにおけるイメージ的対象世界モデルの利用のための枠組みに関する基礎的考察を行った.最終的に,各サブシステムを統合するところまでは至らなかったが,記号表現を補完するイメージ表現に関する基礎的知見は得られたと考える.
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