研究概要 |
本研究の目的は,概念の帰納的学習において,学習される概念の記述そのものの重要性に注目することで,帰納的学習に有効な枠組みを検討し構築することであった. 本研究ではそのためにまず,これまでに提案してきた知識表現の枠組み“概念システム"を理論的に再検討し,概念の記述そのものの意味を扱うための方法を提案した.そこでは概念を記述する個々の名辞(述語)をすべて同等に扱うのではなく,思考の進み具合に応じて考慮する述語の範囲(視野)を変化させ,その視野の範囲で保持する知識を評価することとする.これにより,概念の記述にどのような述語が使われているかによってその概念の意味が変わってくることを意味論的に捉えることが可能となった. 本研究ではこの枠組みに基づいて,説明に基づく学習(EBL:EXplanation-Based Learning)について解析を行った.EBLは一度行った推論を記憶することで以後の推論を高速にする学習法であり,単にスピードアップ学習として論じられてきた.しかしながら,指摘されてきているようにEBLは人が概念を洗練してゆく過程をよく模倣しているとも考えられる.本研究の枠組みはEBLを知織の記述構造の変換よる概念の学習であることを意味論的に説明することを可能とした.このような解析は枠組みを用いて初めて可能となるものである. 更に,本研究ではEBLを発展させた幾つかの枠組み(IOE,m-EBL,ADEPT)等を計算機上にも構築することでこれらの枠組みの有効性を確認し,帰納的学習の効果的な利用法について検討した.
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