研究概要 |
人間が知識を獲得する最も基本的な手段として,教科書や説明書からの知識獲得が考えられる.既にルーチン化された作業に関するマニュアルでは対象機器の形状等に関する情報は記号化(符号化)されているため,記号表現(自然言語文)のみで知識の伝達が可能である.しかしルーチン化されていない作業では,対象を記号化することは困難であり,説明文に出現する物体の説明図の参照が不可欠である.一般に非言語情報-特に図表等-を参照する必要がある場合には,図表のモデルが準備される.しかしシステムが未知の事柄を習得する際に,予め必要な対象のモデルが準備されているのは不自然であり,また参照される可能性のある対象のモデルを予め集積することは不可能である.図表の解釈は文の理解状況に応じてシステム自らが行うべきであるとの信念に基づいて,機械部品組立マニュアルの内容の理解を試みた. 言語理解において,語や句の意味設定が対象分野の考慮の下に行われるように,画像理解では,機械部品を構成する部分図形-例えば楕円,平行線対,穴,穴に挿入される部分等-の抽出を行う手続きの集合を与えた.本研究では,言語中の単語や句が図中のどの部分に対応するかを決定することが重要であり,構文解析器が機械部品の指定に使用される特殊記号にわずらわされぬよう工夫した. 組立指令の言語的特徴は参照図が与えられていることから,対象をその部品名で引用し,部品のどの穴や凸起が組立てに用いられるかを明示せぬ点である.また参照図は組立指令が実行される直前の時点における部品の詳細部の関係が図示されている.このため図示された穴と凸起の組立てが1ステップで実現されない場合,図の情報から組立手順を推測することは困難である.ここでは言語指示と図形の協調が活用されねばならない. 本研究で対象とする組立説明図はテクニカルイラストレーション(TI)の一例であり,組合せられる2つの部品間には補助線が描かれている.しかし類似の組合せが2組以上ある場合には代表的な一例についてのみ言及されかつ補助線描画がされるのが一般的であるため,言語指令される組立操作がいくつ存在するかを知る必要がある.この問題は図形の相関を伴った言語・図形協調を導入することにより解決された.
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