研究概要 |
スピンSが無限大のイジング反強磁性三角格子は温度Tがゼロで磁気秩序があることが筆者によって証明されたが、Sが1/2の場合には磁気秩序が無いので、Sには磁気秩序に関する臨界値が有るはずである。その臨界値の研究を行った。その結果、Sの臨界値は11/2であることが判った。また、有限温度での磁気秩序の振舞いをクラスターフリップモンテカルロ法のテクニックを用いて調べた。計算した物理量は相関関数で、その減衰指数を調べたところ、この系は温度ゼロを除いて長距離秩序が無いこと、そして或温度でKT的な相転移をすることが判った。次に、層状三角格子上の反強磁性イジングモデルについてSが無限大の場合の磁気構造を調べた。その結果、低温で(1,-1,-1)のFR構造をとり、中間温度で(M,0,-M)のPD構造をとることがわかった。低温相について理論的解釈も判っているが今までは三部分格子磁化の和はゼロになると信じられて来たがそれが必ずしも正しくないことが証明されたので、その意味で価値があると考えられる。S=1/2の場合の層状反強磁性三角格子の場合の低温相は依然として明確でないが現在二つの説があり、一つは(1,-1/2,-1/2)のBL構造、もう一つはWannier-Stephen(WS)構造である。筆者は後者の立場を取って論文を投稿中である。三角格子に代表されるフラストレートイジング系の磁性についてはこの3年間の間に多くの知見が得られ、筆者等による英語のテキストが近く刊行の予定である。
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