準周期系の代表的モデルであるハーパーモデルは、1次元周期系に対して系と非整合な正弦波変調ポテンシャルを付加することによって得られる。変調ポテンシャルはエネルギーバンド(エネルギースペクトル)に無限個のギャップを導入するが、小さいギャップを無視すると全バンドは有限個のミニバンドに分裂する。変調ポテンシャル振幅Vと移送積分tの比V/tが、(1)1より小さい、(2)1に等しい(3)1より大きい、の3つの場合に応じて波動関数はそれぞれ、拡がっている、臨界的である、局在している、の3つの振舞いを示す。この中の場合(2)で変調周期が2次の無理数の場合、エネルギースペクトルは自己相似性を持つ。特に、変調周期が黄金比の場合の相似比は全バンド幅Bと真中のミニバンドのバンド幅B'の比によって与えられる。 この系に電場Fを掛けるとすべての状態はVの値に拘らずB/F程度以下の広がりを持った局在状態となり、対応するエネルギースペクトルは平均間隔Fの準周期的シュタルクラダー(SL)となる。以前の研究により私達は前記(1)の場合のSLが準周期系のミニバンド構造と結晶の場合のSLを基本にして理解できることを示した。本研究では前記(2)及び(3)の場合のSLを調べ、その様子を明らかにすることができたので以下に報告する。 (2)の場合:電場による波動関数の局在化により自己相似性は失われる。しかしながら、全SLと、異なった電場F'の下であるひとつのミニバンドに生ずるSLはF/F'を適当に選ぶと相似となる。 (3)の場合:SLは基本的にはF=0に於ける局在状態のエネルギーレベルが波動関数の重心に於けるバイアス電位だけシフトすることによって生ずるものとして理解される。値がFより小さなバンドギャップは効かなくなるので、全SLは有限個のミニバンドに生ずるSLの合併となる。
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