研究概要 |
強い相互作用が本質的に重要な系の場合,単純な近似による取り扱いは正当化されないことが多く,この様な場合に数値的な手法が極めて有力な方法となる.またスピン系は,電子系がある意味で相互作用の強い極限で実現しているとも考えられる.このような視点から以下のような系について数値的な研究を行った. (I)1次元量子Ashkin-Tellerモデルはユニタリー変換によりボンド交替のあるスピン鎖に変換される.このモデルはあるパラメータの極限において,スピン1のハイゼンベルグモデルに一致することから,いわゆるハルディン相の存在が期待される.このような観点から次のような成果を得た. 高次の級数展開法を用いて定量的に相図を完成した.摂動展開は17次まで行い,比熱・磁化・帯磁率に対応する量を求めた.展開された級数をPade近似により評価することで転位点における臨界指数を求めた.この結果,臨界指数が連続的に変化する臨界線の存在が新たに認められた.具体的には,低エネルギー励起をLanczos法で求め,そのconformal towerの解析から系を記述する場の種類を特定した.この数値的に求められた場の種類が,予想されたものと一致することを確認した. (II)磁場中の2次元電子系,ネットワーク系物理をトポロジカルな手法,フラクタルの視点等種々の面から研究した. (III)またメゾスコピック系で問題となっている小さなリングでの永久電流についてもこのエッジ状態を使った議論により研究を行った. (IV)ネットワーク化された計算機環境における物性物理研究という面に関してもノートブックパソコン,UNIXネットワーク,電子メールなどを十分に活用した研究を行うことができた.
|