研究課題/領域番号 |
05216201
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
若土 正曉 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60002101)
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研究分担者 |
長島 秀樹 理化学研究所, 地球科学研究室, 先任研究員 (10087570)
深町 康 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (20250508)
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (30185251)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1993年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 氷山融解 / 極域海洋 / 二重拡散 / 淡水供給 / 熱塩段階構造 / オーシャンフラックス / 水循環系 / 水槽実験 |
研究概要 |
本研究では、時間的にも空間的にも最もグローバルな水循環系の一部を占める極域海洋における氷山融解過程を明らかにするために現場観測と水槽実験を試みた。 (1)現場観測;研究分担者大島は第32次日本南極地域観測隊(1990〜1992)に参加し、ACR(南極気候研究)の一貫として、昭和基地周辺の海洋・海氷観測を実施した。そのうち、リュツォ・ホルム湾の定着氷に捕捉された氷山近傍で実施したCTD観測において、水温・塩分の鉛直プロファイルがステップ(階段)構造を示していることを見い出した(Ohshima et al.,1994)。これらT,Sのステップ構造は氷山が喫水している範囲内の深さにおいてのみ見られた。典型的なステップの厚さは20〜30m、その水温差、塩分差はそれぞれ0.05℃、0.05〜0.10%_0であった。このステップ構造は、海洋に対する氷山の何らかの影響を示しており、塩分成層した海洋中での氷山の側壁融解過程に伴って誘起された可能性がある。氷山に限らず、棚氷や海氷などの融解は、夏季の極域海洋における支配的な海洋現象として、その物理過程を調べることは重要である。 (2)水槽実験:海洋中における氷山融解過程の研究は、今までにも極端に単純化した形の水槽実験が試みられている。それらは、密度成層か密度一様か、側壁融解か底面融解かに大きく分類される。そのうち、本研究では、今まで全くなされていない、密度(塩分)成層下における底面融解の物理過程を調べた。アクリル製の水槽(0.2×0.2×0.5m)にNacl溶液を満たし、氷板の融解にともなって生じる対流現象は、シュリーレン法を用いて可視化した。実験結果は以下のとおりである。海水から氷への熱輸送は、氷下面の水中に数層の層形成をともないながらなされる。但し、これら層形成をもたらすための最も重要な条件は、最初に塩分勾配をつくる際の表面塩分に関してその最大密度が結氷温度以下になる塩分値(海水の場合、24.7%_0)以上でなければならない。氷下面の水中に形成する数層(例えば、境界層、二重拡散をともなう対流層など)の物理的特性と熱輸送過程におけるそれらの役割について、初期条件の塩分勾配、水温を変化させて詳細に調べた。二重拡散をともなう対流混合層の厚さは密度成層が小さい程増大し、氷板の融解率は、水温が高い程、密度成層が小さい程増大した。現在、これら実験結果を整理中であり、今後は、理論的考察も加えて、密度成層下における氷板の融解とそれに伴って生じる上方熱輸送過程についてモデル化を計りたい。
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