まず、1.4-4.2μmプリズム分光器(国立天文台との共同開発研究で製作)の改良を行なった。信号を出さないピクセルがあった検出器アレイを交換した。また、半波長板の回転部分を改良し、コンピュータからの指示で正確に同調して偏光を変調させるようにした。この結果、全波長にわたって効率がほぼ90%以上、器械による偽の偏光が0.1%の測定限界以下という偏光測定システムが完成した。 このプリズム分光器をセロトロロ天文台の1.5m望遠鏡につけて、まずわれわれの銀河系の中心部にある赤外線源の3μm分光偏光観測を行なった。その結果、波長1-2μmに見られるべき乗則からの偏光の超過がすべての天体で観測された。また、波長3.0μmにある吸収で偏光がさらに大きくなっていること、波長3.4μmの吸収では偏光の超過が見られないことがわかった。赤外線源の1つでは偏光の角度が3.0μmの吸収の近傍で回転していることも見いだした。 さらに宇宙科学研究所の1.3m望遠鏡を使い、星形成領域のBN天体・AFGL490・AFGL989を観測し、波長3.1μmの氷の吸収に付随した偏光成分Δpを正確に求めた。BN天体ではΔpと吸収の深さτとの比Δp/τの波長依存性がこれまでにない精度で定まった。このデータから、吸収に関与している物質の吸収バンドの強さを計算する予定である。
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