研究概要 |
星間分子の生成消滅に関わる負イオン過程として、負イオン-正イオン再結合反応をビーム交差法及びフローイングアフターグロー法で調べることを目指して研究を進めた。負イオン-正イオンビーム交差法装置の整備を進めるとともに、フローイングアフターグロー/レーザー誘起蛍光法による振電励起イオンの衝突脱活性及び励起遷移金属原子の反応の研究を行った。前者ではとくにCO^+A^2P(v=1)とHeとの衝突によるスピン-軌道副準位間の遷移に注目し、詳細な解析(シミュレーション)行った結果多くの新しい知見が得られた。^2P_<1/2>-^2P_<3/2>間の両方向の衝突遷移速度定数k(1/2→3/2)=1.7x10^<-10>cm^3molec^<-1>s^<-1>及びk(3/2→1/2)=1.3x10^<-10>cm^3molec^<-1>s^<-1>が求められ、振電準位の脱活性は非常に遅いHeとの衝突においても副準位間の遷移はきわめて速く、両副準位間に平衡が成立してから振電脱活性が起こることが明らかにされた。中性分子NO^2P(v=0)における対応した過程の速度定数との比較から、スピン副準位間のきわめて速い遷移にはイオンの電荷も振動エネルギーもほとんど関係がないことがわかった。 同じ手法による励起遷移金属原子の反応においては、これまでに行ったTi(^3F,^5F)、V(^6D)と酸化物との反応を発展させて、Ti(^3F,^5F)と含水素化合物NH_3,H_2S,C_2H_4との反応を調べた。基底状態のTi(^3F)はこれらの分子とほとんど反応しない(NH_3,C_2H_4の場合)か反応速度定数がきわめて小さい(H_2Sの場合)のに対し励起状態^5Fでは反応がきわめて速いこと、さらに、H_2Sとの反応については、速度定数が遠距離における電子移動機構でほぼ正確に再現されることを等が明らかにされた。
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