まず、量子系の測定を論ずる際には、正しいハミルトニアンを用いることが重要であることを示した.特に、現象論的なハミルトニアンを用いた解析では、測定精度と測定の反作用とが独立可変になるような場合に、正しいハミルトニアンを用いると両者が相反する関係になることを示した.これは、従来の測定器の理論で完全に見落とされていたことであり、重力波測定装置の設計においても、そのよって立つ理論の正当性の再検討を要求することになり、大変重要な結果である.この研究成果は、1993年8月に行われたHatoyama Workshop on Foundations of Quantum Physicsおよび、1994年1月に行われた第3回重力波天文学シンポジウムにおいて発表した. また、半導体量子細線などのナノスケールの電子系を測定器に用いる場合に、電子系の量子揺らぎが、測定精度の原理的限界を決定していることも示した.この研究成果は、1993年11月に行われたJRDC International Symposium on Nanostructures and Quantum Effectsにおいて発表した.(招待講演) さらに、電子系の、いわゆる仮想励起を用いて、光子数等の量子非破壊測定を行う試みにおいて、電子系と結合する外部回路のダイナミクスによっては、光子系がエネルギーシフトを受けることも発見した.この研究成果は、速報を現在投稿中である. これらの研究により、量子系の測定に関する理解がかなり進んだと言えると思う.
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