研究概要 |
本研究は,いわゆる科学技術計算などの定型的処理のみならずシミュレーションなどの非定型処理をも対象に,再利用性・保守性に優れた超並列処理記述・処理系の基礎を確立することを目的としている。本重点領域研究での目標に明記されている,問題の入力から最終結果までの全過程で利用者を助けるようなシステムとするには,いわゆるプロトタイピング手法によってシミュレーションモデル記述を所望のモデルに対話的に近づけていける仕様記述環境の構築が必須と考えたからである。 本年度は,上述のような要件を満たす超並列処理記述の基礎を確立するため,超並列処理に必要な情報を広義のデータ依存性として表現する能力を持ったデータ駆動スキーマと副作用を明示するデータ駆動解釈を定式化することを目標に,以下の研究を進めた。即ち,データ駆動スキーマが明示する入出力データ構造とそのデータ従属性を活用した,ソフトウエア再利用支援手法を検討した。いわゆるソフトウエアの部品化には,入出力データに関するデータ駆動解釈の適用が有効であることは周知であるが,本研究では,改変を含む広い意味での再利用性を向上させるために,予期せぬ副作用の検出手法の確立をめざした。まず,データ駆動スキーマがプログラムの記述法だけでなく,外部仕様の表現法としても活用されている事実に着目し,最上位の仕様記述から最下位の実行可能プログラムに至るすべての水準をデータ駆動スキーマとして捉える統合的環境の枠組みを採用し,仕様記述とプログラムの乖離を原理的に回避した。さらに,大規模プログラム作成の常套手段である階層構造化を環境自身の機能として,設備備品に申請したワークステーション上に実現して,モジュール結合・改変時の副作用検出が容易になることをいくつかの適用実験を通じて確認した。
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