研究概要 |
本研究では,画像の相関値をもとに表情変化を動的に検出することを目的として研究をおこなった. 具体的な研究手法は,ビデオカメラからの標準画像(テンプレート)を多数採取し,それらを座標空間に自動的に配置することにより,個々のテンプレートの表現するパラメータ値(たとえば表情の種別)を自動的に付加してテンプレートセットを作成する(テンプレートの自動組織化).実際の認識段階では,顔を視覚を用いて追跡しつつ画像を採取し,テンプレートセットとのマッチングによって表情を判定しようとしたものである. テンプレートセットの自動組織化については,(1)顔を上下左右にむけた画像群,(2)母音を発音した口の形状,について実験を行ない,どちらも個々の画像間の論理的関係を反映する形で組織化ができることが示された. これをふまえて表情認識の実験をおこなった.トランスピュータを利用して顔の実時間トラッキングをしつつ,表情を変化させて画像を採取し,多次元尺度構成法を利用してテンプレートセットを作成した.認識段階でも同様のトラッキングを利用して画像を採取し,マッチングによって表情を判定した. その結果,対象個人を特定した場合には,典型的な表情については完全に判定ができた.さらに,中間的な表情についても,かなり正しい判定が可能であった.認識に要する時間は数秒程度であり,当初の目的であった動的認識に一応成功したといえる. 今後の方向としては,(1)対象を不特定個人へと拡張する,(2)中間的表情についての程度の判定,(3)表情以外への応用(たとえば読唇),などが考えられる.
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