この研究は、よりすぐれたメディア表現を実現するために、視聴覚メディア情報の感性的側面について、その物理構造、とりわけこれまで充分に把握されてこなかった非定常構造のような動的な構造を重視して定量的に抽出・分析し、それらに対応する人間の感性的反応を心理学的および生理学的両面から評価することにより、よりうつくしくこころよく人間に適合性のたかい感性情報についての基礎的な知見を得、感性情報科学の構築に貢献することを目的としている。 平成5年度は、おもに以下の項目について研究をおこなった。 1.音響情報の動的物理構造抽出・分析法の開発:あたらしい波動現象解析原理として最大エントロピー法に注目し、これを応用して、うつくしさ、こころよさとのつよい関連が推定されるミクロなゆらぎ構造を解析するコンピュータ・ソフトウェアの開発をおこなった。 2.音響情報のゆらぎ構造の分析:【.encircled1.】の分析法をもちいて、楽器音、快適な自然環境音などの分析をおこない、そのゆらぎ構造を抽出した。 3.LPとCDとの再生信号・感性反応の検討:おなじ音楽ソースからつくられたLPとCDとについて、その再生信号の周波数分布のいちじるしいちがいを確認するとともに、両者が聴取者におよぼす心理的・生理的な感性反応に明瞭なちがいがあることをみいだした。 4.感性情報研究における研究アプローチ法の検討:感性情報研究というあたらしい研究分野に適合性のたかい研究アプローチとして、非デカルト的アプローチあるいはメタ・ディシプリナリ・アプローチを構想し、その有効性を検討した。
|