研究概要 |
BMPにより異所性に誘導された骨および軟骨形成細胞における骨基質蛋白の遺伝子発現様式は,未だ十分に解明されていない。そこで本実験では,BMPにより誘導された硬組織形成細胞を対象とし,骨基質蛋白としてオステオポンチン,オステオネクチン,オステオカルシンについて,ディゴキシゲニン標識cRNA probeを用いたin situ hybridization法による遺伝子発現の検討を行った。 I型コラーゲンを担体とした粗精製BMPをラット皮下に埋入した際には,はじめにオステオポンチン,オステオネクチンのm-RNAが発現したが,その発現細胞は形態学的に相違を示していた。さらに発現部位においても相違がみられ,オステオネクチン発現細胞はより広範な細胞で認められることが示された。またオステオカルシンは埋入後2週になり,石灰化を開始した部位の骨細胞あるいは骨芽細胞ではじめてシグナルを認めオステオポンチン,オステオネクチンの発現に比較して時期的に遅れ,骨芽細胞に分化した後に発現することが示唆された。 電顕的観察結果からはBMPは未分化間葉系細胞に作用して,軟骨・骨系列の細胞に分化誘導(細胞系列の決定)し,その後の分化の振り分け(分化の決定)は,局所の環境や外的要因の影響を受けるものと考えられる所見を得た。また,この一連の分化過程にBMPによって活性化された単球・マクロファージやこれらの細胞によって分泌される骨誘導関連物質が深く関与していると考えられる。 今後さらにBMPによる異所性骨誘導における骨基質蛋白の遺伝子発現様式が,発生過程にみられる骨および軟骨の遺伝子発現様式を再現しているかを再検討すべきであろう。
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