研究概要 |
本研究では,脊椎分離症の発症原因を力学的観点から確明するため,まず分離症が頻発する第5腰椎を忠実に再現した有限要素モデルを作成し,解析を行った.境界条件としては,簡単のため椎体の上下面を拘束し,小関節面に作用する荷重の方向(椎体上面に対する角度αと矢状面に対する角度βで規定:α,β=0°〜90°)と荷重の作用点(α=0°,β=0°とし,小関節面内の9箇所の点に作用)を変化させた.つづいて,この有限要素解析の精度を確認するため,アラルダイト製の3倍模型を製作し,荷重条件α=0°,β=0°の場合に発生する各部のひずみをひずみゲージによって検出した.以上に加えて,腰椎をとりまく力学的環境を可能な限り精密に再現する目的から,第3・第4腰椎間の椎間板から第5腰椎・仙骨間の椎間板までの忠実な形条と,さらにそれらに付着する靭帯を再現した有限要素モデルを作成し,一例として伸展の場合を解析した.以上の研究の結果得られた結論は次のようにまとめられる. 1.荷重条件α=10°,β=0°の場合に関節突起間部に最も大きな引張り主応力が発生する.その主方向は脊椎分離症の症例で最も頻繁に観察される分離面に垂直な方向である.小関節面の内端に作用する荷重は外端に作用する荷重に比べ,関節突起間部に約3割大きな応力を発生させる. 2.アラルダイトの模型実験のひずみ分布と有限要素解析結果はほぼ一致し,解析は妥当である. 3.下部腰椎とその周辺組織の主要部分を考慮したモデルの伸展解析において,第5腰椎に第4腰椎よりも大きな応力が発生する.
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