研究概要 |
超臨界流体中の固体表面反応をin situに研究するための赤外分光学的手段の開発と,それを用いた基礎的研究を試みた. 1.固体表面反応の検討 SC-CO_2中の金属酸化物ならびに金属表面における分子の吸着挙動を,温度,圧力を変化させながらin situに検討した.高圧分光セルならびに測定方法に改良を加えた結果,測定感度を向上させることができたが,数十種の試料分子のうち測定に成功したものはチオール類やカルボン酸などの本質的に吸着力の強いもののみであった.その原因の一つとして,固体表面の清浄化に問題があり,また超臨界流体中で清浄度を保持することが極めて困難であることが挙げられる.この問題の解決のためには,実験方法全般にわたる見直しが必要で,現在検討中である.第二点として,超臨界流体液では、水溶中や有機溶媒中に比べて,吸着が起りにくい.これは,溶媒和により分子クラスターを形成することと関連があると思われるので,次項の吸着系を利用した溶媒和構造の検討を行った. 2.吸着系を利用した溶媒和構造の検討 振動スペクトルは分子クラスターの局所的な情報を与えるが,均一系では複数の構成原子団の影響が重畳され,解析が困難であるため,目的分子を金属表面に固定化し,特定の原子団のみが溶媒分子と相互作用する条件で振動状態を検討した.ここでは均一系の測定でSC-CO_2の密度により大きな変化がみられたエステルのC=O伸縮振動を中心に検討した.分子はメルカプト基で表面に固定し,C=O基の周囲には溶媒分子が数個しか侵入できない空間を作るようにデザインした.メタノールや水など水素結合を作る溶媒系ではC=Oの振動状態に大きな変化がみられたが,SC-CO_2系ではほとんど変化が見られなかった.このことから,CO_2の配位圏が他の溶媒系に比べて大きい,ないしは特定の配位した場合にのみ振動状態を変化させることが推定された.現在これを理論的に検討中である.
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