研究概要 |
Bi_2Sr_2CaCu_2O_8にヨウ素をインターカレーションすると、Tcが約15K低下することが知られていたが、その原因は、ヨウ素からCuO_2面への電荷移動によるオーバー・ドーピングの効果と、次元性の変化の効果の両方であることを明らかにした。さらに、ハロゲンのインターカレーションによるBiO-BiO層間の伸びは、ハロゲンの種類(I,Br,IBr)によって異なるが、Tcの低下は、ハロゲンの種類によらず同じであることから、次元性の変化によるTcの低下は、BiO-BiO層間の距離の変化に因るのではなく、BiO-BiO層間の結合の変化に因っていることがわかった。そして、インターカレーションによってc軸方向の電気抵抗の温度変化が金属的になることを考慮すると、インターカレーションによって、BiO-BiO層間の電子的な結合が強くなって、より3次元的になり、Tcの低下を助長していると推論できた。すなわち、Bi系酸化物においては、より2次元的な電子構造が超伝導に有利であることがわかった。 Bi_2Sr_2CaCu_2O_8について、ヨウ素をインターカレーションし、そのTcのヨウ素濃度x依存性を詳細に調べた結果、xの小さい領域では、ヨウ素からCuO_2面への電荷移動によるオーバー・ドーピング効果のために、xの増加とともにTcが低下し、xの大きい領域では、何らかの理由でCuO_2面のホール濃度が飽和し、Tcが一定になることがわかった。したがって、オーバー・ドーピングによって超伝導が消失する高キャリアー濃度領域の試料を作ることはできなかった。これは、Biがホールを取って+3価から+5価に変わりやすいためであり、Bi系酸化物の宿命と思われる。
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