研究概要 |
強相関電子系に電子-格子相互作用を導入したとき絶縁体相では反強磁性相、スピン-パイエルス(SP)相、ボンド秩序波相、電荷密度波相等多くの相が出現する。また60K級YBa_2Cu_3O_<7-y>のスピンギャップがスピン-パイエルス型の2量体化格子歪みにより起こっている可能性や電子-格子相互作用が超伝導転移温度を高めている可能性が指摘されていた。強相関系における電子-格子相互作用の効果を調べる目的で最近長谷らによって発見されたCuGeO_3のスピン-パイエルス転移及び超伝導の抑制を伴うLa_<2-x-y>Nd_xSr_yCuO_4のLTO相からPccn相またはLTT相への転移をラマン散乱で観測した。 CuGeO_3ではスピン-パイエルス転移温度T_<SP>(14K)以下で(cc)偏光のみで30,60,105,228,370,819cm^<-1>に新しいピークが現れる。これらのピークは(0,0,π/c)のゾーン端のモードがc軸方向の2量体化によってГ点に折り返されてラマン活性になったものであると考えられる。5KからT_<SP>に温度を上げていくと30cm^<-1>ピークのエネルギーと強度は低下し、T_<SP>以上では幅の広いピークが現れ高エネルギー側にシフトし300Kで34cm^<-1>に達する。T_<SP>以上では本来観測されないこのゾーン端のモードが観測されるのは、有機系と同様に300Kですでに強い2量体化ゆらぎが存在するためであると考えられる。60cm^<-1>ピークはユニークでT_<SP>を越えて60K以上まで強度を保っている。 LTT相で超伝導転移温度が抑制される原因を調べるためにLa_<2-x-y>Nd_xSr_yCuO_4のラマン散乱を行った。2-マグノン・ピークはx=0のとき3340cm^<-1>(J=1240cm^<-1>)、x=0.12のとき1450cm^<-1>である。LTOからPccnまたはLTTへの転移は電気伝導でx=0のとき77K、x=0.12のとき71Kと観測されているがラマン散乱では鋭い転移は観測されなかった。フォノンの線幅が広いためx=0のとき50〜100Kでピーク間の強度の移り変わりが徐々に観測されただけである。
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