研究課題/領域番号 |
05226202
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 宏 北海道大学, 工学部, 教授 (20027410)
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研究分担者 |
市川 恒樹 北海道大学, 工学部, 助教授 (10001942)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 基底三重項分子 / トリメチレンメタン / メチレンシクロプロパン / 電子スピンエコー / 常磁性緩和 / EPR / 放射線化学 |
研究概要 |
基底三重項分子トリメチレンメタン(TMM)を、メチレンシクロプロパン(MCP)の低温γ線照射で生成し、その磁気緩和の機構を電子スピンエコー(ESE)法で解明することを目的とした。有機高スピン磁性材料設計には不可欠な電子スピン間相互作用の理解の基礎として、この典型的基底三重項分子の磁気緩和機構を解明をめざした。 高純度MCPを合成し、これを77Kの多結晶状態で種々の線量で照射した。TMMによる典型的な三重項ESRスペクトルが二重項ラジカルスペクトルとともに観測された。試料のESE測定を77Kで行ったところ、二重項ラジカル以外の信号は観測されなかったが、4.2KではTMMの信号も測定された。2-パルス法で測定した横緩和曲線にはプロトンによる顕著な核変調効果が重なる。核変調効果を除いた横緩和は概ねexp{-(τ/T_2)^2}の形に書き表すことができる。緩和時間T_2は2.6μs程度となり、スペクトル位置にも照射線量にもほとんど依存しない。3-パルス法で測定した縦緩和は概ねexp{-(T/T_1)^<0.75>}式に従い、緩和時間T_1は2.9〜3.9msで、スペクトル位置と照射線量に依存して変化する。軸対称ゼロ磁場分裂の軸方向で緩和は遅く、垂直な面内で緩和が早くなる傾向が見られる。縦緩和はTMM濃度に概ね比例して緩和速度が早くなる。 TMMの常磁性緩和は、二重項ラジカルに較べて早いが、分子運動が抑制される4.2KではESE測定が可能であることが確かめられた。マトリックス中の二重項ラジカルの場合と同様に、TMMの横緩和も縦緩和も共に単純な指数関数で表せない。緩和時間を適切に定義するためには、緩和ダイナミクスの解析が不可欠である。定性的には濃度に依存しない横緩和は超微細相互作用の変調により、濃度に強く依存する縦緩和は電子スピン間の交差緩和機構によると考えられる。縦緩和のスピン濃度依存性や温度依存性を詳細に調べることが今後の課題である。
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