研究概要 |
磁気吸・脱着は外部磁場印加に伴なってただちに起こり、一般的に数分以内に一定値に達するか、最大値に達した。磁場中での吸着量変化は、固体の種類に依存し、指数関数的に減少する場合もあった。磁場を除くとすぐに吸着量は初期値に向かって物理吸着では可逆的に、化学吸着では不可逆的に変化した。磁場印加に伴う最大の変化量を磁気吸着量ΔVとして、吸着の磁場応答性の指標とした。室温で酸化鉄に吸着したNOは、磁場印加によって吸着する場合(α-Fe_2O_3,γ-Fe_2O_3,Fe_3O_4)と脱着する場合(α-,β-,γ-,δ-FeOOH)とがあった。室温でδ-FeOOHは、フェリ磁性であるのでマクロな固体磁性は磁気吸・脱着の支配因子ではないと考えられる。固体の前処理条件(H_2、O_2処理など)を変えると、磁気応答の程度が変化するので、NOの吸着状態が重要であると思われるが、吸着種の特定は一部を除けばなされていない。固体の5Aおよび10A細孔に吸着したNOは磁場に強く応答した。 吸着水は吸着量とともにその吸着状態を変える。第1層の水は強く固体表面と相互作用し、少なくとも第2層や多分子層中の水とは区別される。また、細孔中の毛管凝縮水とも区別される。吸着量の関数として吸着水の磁場応答性を調べると、第一層の水は磁場に応答しないが、疎水性表面上で弱く吸着した第一層の水は磁場応答することがわかった。また、スリット上細孔中の水はその細孔径に依存して磁場応答性を変えることがわかった。この磁気吸着量は一般に磁場強度とともに低磁場で脱着し、ある閾値以上で吸着に転ずるが、全磁場強度域でFe_3O_4では吸着、α-FeOOHでは脱着した。
|