bicyclobutaneの異性化には、side bondの開裂によりtrans-butadieneを生成する(path3)、central bridge bondが切れcis-butadieneを与える(path1)、及びclobuteneが生成する3通り反応が提案されている。本研究ではこれらの反応機構の妥当性を検討するため非経験的分子軌道法による検討を行った。Pathe3の反応障壁の計算値は44.7kcal/molとなり、実験値と良い一致が見られた。遷移状態の構造は、片側のside bondが完全に切れているが(1.61A)、反対側の環構造は出発物とほとんど変わらない。cis-butadieneを与える経路(path1)には二つの中間体が存在していた。反応全体のエネルギー障壁を決定するのはbiradicalから3-butenylideneへの反応(障壁は約57kcal)で、最後の水素移動の障壁は約6kcalと低い。Path2の水素移動のエネルギー障壁の値は約28kcalとpath1に比べ大きく、この異性化反応の中で最も大きな活性化エネルギー(63kcal)を必要とする。
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