研究概要 |
超冷中性子顕微鏡の開発研究を進めているドイツの研究者が検討しているが,現在の所,他に類例はない.超冷中性子のチャンバと反射鏡,回折鏡の開発が必須のため,その製作に取りかかった.そこで開発したのが,超精密加工表面を原子サイズより密な面を持つように仕上げる機械である.勿論,水素吸臓のない表面が求められる.反射鏡の素材は超冷中性子の反射率Rによって決まる.非晶質Ni,Be,Cu,C等がGold formulaによって有効であることが求められるので,この材料について回折鏡,反射鏡の製作を実施した.これを製作する機械が完成したのは10月('93年)である.Beは毒性と環境汚染のため省略した.Ni,Cu,Cについて,反射率Rを決めるV値(Ni=33.5×10^<-8>eV),Cu(24.4×10^<-8>eV),C(16.0×10^<-8>eV)の大なる順にミラーを作成した.その結果仕上げ面粗さRaは,Ra(Ni)=0.7〜1.2A(オングストローム,10^<-10>m),Ra(Cu)=0.5〜1.0A,Ra(C)=1.5〜3.0Aとなった.世界的に見て,これ以上の値は現在の所,実現された例はみられていない.この技術を支えているのは,本研究者らが発明した超磁歪材料Tb-Dy-Fe-Mnを用いた超精密位置決めアクチュエータの実現によることを多とする.この発明によって反射鏡,回折鏡の加工位置決めがSubnanometerを得ることが出来た.これまでは,米国ローレンスリバモア研究所が開発した電歪型アクチュエータによる2nmの位置決めが最高であった.以上の成果は次に示す研究発表に記載されている.次に,得られた超冷中性子蓄積チャンバと超冷中性子の反射鏡と回折鏡の性能テストを準備している.これに関する本格的な性能評価テストは,次年度以降に実施する.現在の所,予備的テストの結果回折鏡,反射鏡表面下50μmの深さにわたる水素吸臓は20〜150ppmであり,これを2桁程度減少し,0.1〜10ppm以下にするための技術開発を進めている.一つの方法は10^<-8>〜10^<-10>Torrでの加工,あるいは不活性ガスでの加工を検討している.
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