研究概要 |
凸多面体の組合せ論を代数的および計算幾何的側面から進展させることが我々の研究課題である。当該年度では、凸多面体に含まれる格子点の数え上げに焦点を絞って、我々の研究を展開させた。整凸多面体Pが与えられたとき、その‘ふくらまし'nPに含まれる格子点の個数i(P,n)はnに関する次数d(=Pの次元)の多項式であり、PのEhrhart多項式と呼ばれる。ただし、nは非負整数である。可換代数の一般論によって、i(P,n)をHilbert函数に持つCohen-Macaulay次数付正規半群環A(P)が構成できる。我々は、既に、A(P)がGorenstein環となるためにPが満たすべき必要十分条件を双対凸多面体の言葉で記述することに成功していたが、A(P)がGorenstein環となるような整凸多面体Pの自然な類を発見することが懸案の問題であった。我々は、任意の有限半順序集合XからA(P_x)がGorenstein環となる整凸多面体P_xを構成し、更に、非特異射影的トーリック多様体のcohomology環の強Lefschetz定理を組合せ論的に応用することで、i(P_x,n)に付随する或る有限数列がunimodalであることも示した。他方、幾つかの計算機実験によって、i(P,n)に関する下限定理を予想し、Pの都合の良い三角形分割を構成することにより、その予想を肯定的に解決した。その他、球体の(必らずしも凸とは限らない)幾何学的実現のEhrhart多項式も考察の対象とし、A(P)の環論的性質を媒介として証明されていた、i(P,n)の係数についての幾つかの線型不等式の一般化を試み、部分的な結果を得た。将来、我々の研究を進展させ、Ehrhart多項式の理論を築き上げるためには、次数付正規半群環A(P)が次数1の元で生成されるための必要十分条件をPの組合せ論的な言葉で記述すること、計算機実験によってi(P,n)に関する然るべき上限定理を予想すること、などが重要な鍵となる。
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