研究概要 |
本研究の目標は量子化戸田格子を構成することである。その手段として量子群の対称性を利用するところが本研究の特色である。量子群GL_q(n)の座標環A(GL_q(n^1))においてq→1とすることにより線型代数群の座標環A(GL(n))にはPoisson構造が入る。これを準古典極限という。従来の戸田格子はこのPoisson構造上のHamiltonian systemとして実現出来る。{,}を今述べたPoisson構造とする。またy_<ij> <__<i,j>nをA(GL_q(n))の生成元とする。y=(y_<ij>)_<n×n>としたとき次が成り立つ。{tr(y^k),y_<ij>}=k[p_k(y),y]_<ij>,ここでp_k(y)_<ij>=(y^k)_<ij>,i<j 0,i=j-(y^k)_<ij>,i>j.この公式より{try^k,try^l}=0が成り立つ。すなわちtry^k,k=1,2,…は互いに可換なHamiltonianとみなせる。行列yに適当な制限を課すとtry^kは戸田格子のHamltonianとなる。以上の話の量子化を行いたい。その際相空間はA(GL_q(n))に、またx_<ij> 1<__<i,j>nをA(GL_q(n))の生成元としたときPoisson関係式の代わりに[x_<ij>,x_<kl>]を考える。本研究の第一課題はtry^kの_<q->類似をA(GL_q(n))上で構成することである。もしtry^kの_<q->類似をH_k k=1,2,…とおくとH_k達は[H_k,H_l]=0を満たさねばならない。私はH_kはtr(_qX^k) k=1,2,…なのではないかと予想した。ここでX=(x_<ij>)_<n×n>で_qX^kはXの_<q->巾と呼ばれるもので行列Xの通常の巾乗を_qでひねったものである。この予想に関してふたつの部分的結果を得た。ひとつはtr_qX^k,k(〕 SY.gtoreq. 〔)nはtr_qX^k,1<__kn-1及びdet_qXの多項式で書き下せること。つまりHamiltonianの個数は本質的に有限であることを示した。もう一つはこの結果を用いて一次と高次のHamiltonianの可換性すなわち[tr_qX^k,tr_qX]=0,k=2,…を示した。これらの結果についてはロシア、ウクライナ及び京都大学での研究集会で発表した。非線型可積分系の第一積分の量子化は多くの数学者、物理学者により研究されている。例えばKostantによるco-adjoint orbit法や、Feigin,Frenkelによるfree field resoluionの第一cohomologyとして量子化戸田格子のHamiltonianを実現する方法などがある。特に後者は量子展開環との関係についても言及されているので本研究との連関について今後考えていきたい。
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