研究概要 |
量子群の中でも、non-compact型の量子群SUq(1,1)について、その無限次元表現をスペクトル理論の立場から研究し、次の結果を得た。 (1)SUq(1,1)には、Hopf algebraとしての座標環と、そこに作用するカシミール作用素があるが、それと両立する形で、SUq(1,1)上のL^2空間、及び、その上の自己共役作用素として、カシミール作用素を実現した。この定式化は、将来、量子群の上の調和解析を構築する上で重要である。(2)カシミール作用素のスペクトル、及び、固有関数展開を具体的に計算し、次の3つの系列が、実際に存在する事を証明した。 i)principal series ii)discrete series iii)strange series 特に、iii)strange seriesの存在証明の意義は大きい。実際、この系列は、量子群の場合にのみ現われ、古典群の場合には、存在しない系列だからである。 (3).(2)と関連するが、固有関数展開がbagic hypergeometric functionと呼ばれる特殊関数を用いて、具体的に与えられる事を示し、かつその展開の係数を求める事にも成功した。 (4)principal seriesはカシミール作用系の連続スペクトルに対応する系列であるが、これに対応するC-関数を具体的に求める事に成功し、これを用いて、Plancheralの公式を、この系列に対して証明した。 これからの研究の展開に関する計画として、strange seriesのテンソル積を既約表現の直和に分解する、という、いわゆるClebich Gordan係数の計算を考えている。実際、この問題の解決が、量子群の構造に関して、新しい重要な情報を提供してくれるであろうと期待されているからである。
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