研究概要 |
Brandeis大学のAdler,van Moerbekeと共同でKP方程式系と2次元Toda lattice系の両方についてその解空間へのW_∞ algebraの作用を研究し、Orlov等の導入したBaker関数への(中心拡大をしないw_∞の)作用と京都schoolの導入したγ関数への作用との完全な1対1対応を証明した(Adler,van Moerbekeと現在執筆中)。その過程でOrlov,Krichever等と議論し、Baker関数へのW_∞の作用とKricheverのCauchy核の関連、Krichever理論の視点からその幾何的な意味などを検討した。又2次元Toda lattice系の理論でAdlerとvan Moerbekeが1980年の論文で導入した無限行列の対からなる代数の部分代数の直和への分解がKP系の理論での擬微分作用素環の微分作用素環と負の位数の擬微分作用素の環への分解と完全に同等な役割を演じることを発見し、2次元Toda lattice系の構造の理解を深め、特に本研究では2次元Toda lattice系の場合の証明を大幅に簡略化することを可能にした。 本研究の本来の目的であったVirasoro対称性を持つKP解(あるいは一般にW_∞のある元の作用の固定点)の研究は、行列模型から構成される(p,1)modelからの摂動解(既知)に関すること以外では解の正則性、多価性など定性的な性質(RIMS91の際の成果の精密化)が得られたのみで構造的理解に至っていないが、そこで用いられた技法はAdlerなどとの共同研究でW_∞の作用の単射性の証明に応用された。
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