研究概要 |
本年度も,4年度に引き続き,物理学および数学への応用を念頭において可解格子模型の研究を行った.可解格子模型にもとづく絡み目不変量の構成法においては,ヤン-バクスター方程式の解としてのボルツマン重率を用いた組み紐群の表現から出発する.通常の解を用いた場合は,解を特徴づけるパラメータの適当な極限で,対応する組み紐群の生成子(組み紐行列)が単に置換作用子になる.このような極限を古典極限ということにすると,4年度までに得られていた,紐ごとに異なる変数(色変数)をもつ組み紐群の表現は,通常の意味の古典極限をもたない場合に相当する.このような表現は,数学的には絡み目の新しい位相不変量の構成という観点から,また物理的にはいわゆるエニオン粒子との関連で大変興味深い.本年度は,主としてこのようなエキゾティックな表現の可能性を検討した.具体的には,上記の古典極限を拡張した「擬古典極限」を新たに考え,擬古典極限と整合的な組み紐行列の構成を行った.その際,組み紐群の定義関係式(スペクトル変数なしのヤン-バクスター方程式)は組み紐行列要素に対する代数方程式となる.さらに,絡み目不変量構成の立場からは不可欠の,いわゆるマルコフトレースの存在条件を要求すると,行列要素に対する非常に強い拘束条件が得られ,解の有無の判定および解の具体形の構成が容易になることが明らかになった.この方法を用い,いくつかの自明でない解を得た(投稿準備中).この解の具体的応用やヤンバクスター化等についても研究を進めつつある.また上記色つき解(および対応する頂点模型)については,その物理的意味解明の一環として,秩序変数展開の計算を行った. 本年度交付補助金によって計算機環境が補強され,これらの研究を進める上では大きな利点となった.
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