研究目的・研究実施計画にもとずいて研究代表者は次のような成果を得た。 1.近年結び目・絡み目の多項式不変量がいくつか発見されたが、それらは正則射影図から求められるものであった。ここでは、矢島により定義された結び目・絡み目のグラフを通じて新しい不変量を得ようと試みた。まず、抽象的なグラフについて、縮約と除去の2つの操作から帰納的に求められる不変量の一般的な解を求めた。その後、Reidemeister movesにより不変であれば結び目・絡み目の不変量となることから、この条件をみたすようなものはJones polynomialと同値なものに限られることが判明した。 2.樹下・寺坂により、ユニオンが非自明であることが示され、より一般的に渋谷により、非自明な結び目の非自明なユニオンは素である、と示された事実をより一般的な設定のもとでタングルによる幾何構造の分析により示した。また、このときの除外例を具体的に示した。 3.与えられた結び目に対して、同型な結び目全ての正則射影図全てのなかで、自明な結び目の正則射影図を得るのに要する結び目解消操作の最小数を結び目解消数と定義する。定義が幾何的なために微妙な難問が多い。交差数最小の正則射影図ならば適切な一回の結び目解消操作で結び目解消数がより小さい結び目の正則射影図になるかとの予想に対して、2 bridge knotsのときは正しいことを示した。この予想が正しければ、結び目解消数を求めるエルアルゴリズムが得られる。 以上の結果は現在投稿準備中である。
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