研究概要 |
全国の大学の研究者が集まり,日光周辺域において合同地震観測を行なった.観測の主たる目的は,これまでの研究で異常構造のみえているこの地域下の地殻・最上部マントルの不均質構造を従来にない空間分解能で探り,火山の深部構造を調べることにある.地震波速度構造推定の空間分解能と探査可能深度を考慮して次の2種類の観測網を構築した. 1)広域エレメータ観測 日光地域の60Km×60Kmの領域に合計38点のテレメータ観測点を設置した.各観測点からの信号は無線または有線テレメータにより日光戦場ケ原の宇都宮大日光演習林に集めた。集められたデータは計144チャンネルとなり,16bit,200HzでA/D変換され,ワークステーションにより自動処理・収録された. 2)超多点アレイ観測 日光・足尾地域のS波反射面のほぼ真上に約7Km×7Kmの十字型の測線を展開し,それに沿って約100Km間隔で計200点の観測点を設置した.各観測点には3成分地震計と無線による遠隔制御方式のディジタル・レコーダを置いた.この新しい観測方式の最大の特徴は,見通し外でも届く60MHz帯10Wの電波を使用して,各観測点に設置されたレコーダーを一斉制御することにある. 観測は,1993年9月中旬〜11月末の2.5ヶ月間にわたり行なわれた.自動処理により震源決定された地震数は約800個,アレイ観測で収録された地震数は約100個である.解析作業は現在も継続中であるが,多くの成果が期待される.例えば,超多点アレイ観測で得られた人工地震の記録では顕著な後続波が認められたが,これはアレイ直下からの反射P波(PxP波)と思われる.日光・足尾地域下の反射面について,マグマ溜まりではなく水で満たされた層であるという議論もあるが,このような問題を解決する上でこの波は,重要な情報を与えてくれると思われる.
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