研究概要 |
島孤型ソレアイト玄武岩が卓越する岩手火山において高密度サンプリングを行い,それらの顕微鏡観察・主成分元素・微量成分元素組成の定量を行った.その結果,以下のことが明らかになった. (1)島弧火山岩の斑晶モードと全岩化学組成の関係を検討し,斑晶効果は軽微であることを示し,全岩組成によりマグマ(液)組成変化を詳細に検討できること明らかにした.(2)玄武岩から安山岩の組成多様性は,液相濃集元素比により,結晶分化作用で形成されたと考えられるが,斑晶鉱物組成の分別では説明できず,斑晶が晶出するよりも深部での結晶分化の影響が強い. (3)玄武岩から安山岩までの組成多様性を検討すると,カンラン石+単斜輝石の結晶分別からそれに様々の割合で斜長石斑晶が加わる,複数の結晶分化トレンドの合成であることが判明した.この複数のトレンドは同じ活動期でも共在する.(4)3で示された結晶分化作用は,高温・高圧実験を考慮すると,斜長石の晶出の圧力依存から,モホ面近傍から7〜8kb以浅までの広い深度でのポリバリックな性質で特徴づけられる.(5)複数の結晶分化トレンドを持つことになった原因は,初生マグマの段階での微妙な組成差があった可能性が最も高く,これは玄武岩マグマ発生時の部分溶融度の違い,あるいは地殻物質との反応の程度差と考えられる.(6)島孤玄武岩は一般に分化が進んでおり,深部での長時間のマグマの停滞を意味するが,その深度はモホ面近傍から地殻中部にかけてで,斑晶鉱物が晶出するような浅部のマグマ溜まりでは効果的に結晶分別をするほどは停滞していない.このことは地球物理学的観測事実と調和的である.
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