研究概要 |
本研究においては,霧島火山の深部構造に関する問題を解決するために,二通りの電磁気学的観測手法を適用した.その第一は,新燃岳などの活動的火山の周辺におけるELF・ULF-MT法観測である.観測は,平成5年9月20〜30日に実施した.深部構造を反映する長周期(ULF)の観測は,U30・U36など現有の装置10台を用いて,ほぼ全期間実施した.比較的浅い構造に敏感なELFの測定は,全ULF観測点で実施するとともに,これまでにデータの得られていない地域での観測も行なった.幸いに,振幅の大きな電磁場変動の記録を数日間にわたって得ることが出来た.データ処理の後に1次元構造解析を行なった結果,以下のような結果を得た. (1)御鉢を除く地域では,厚さ100〜300mで数100Wmの表層の下に数Wmから数10Wmの帯水層と思われる低比抵抗層が広く分布している.帯水層の比抵抗は,硫黄山や新燃岳などの活動的な火口近傍では極めて低くなる傾向がある. (2)帯水層以深は高比抵抗層があり,10kmから15kmの深さに再び低比抵抗の層が存在する.深部低比抵抗層は硫黄山や新燃岳などの火口下では,2〜5kmにまで浅くなっている.1991年11月に発生した新燃岳直下の群発地震は,この低比抵抗層の上面付近で発生していることなどから考え,この層がマグマあるいはマグマ由来の高温のガスを含む層に対応するものと解釈される.一方,御鉢火山の下にはこのような深部低比抵抗層が見られない.このことは,御鉢火山のマグマがより深部に起源をもつものであることを示すのかも知れない. 第二の手法である,ネットワークMT法は,10数kmの空間スケールで見た場合に,霧島火山の電磁気的深部構造にどのような特徴があるのかを調べることを目的に実施した.観測は,平成5年11月から開始したが,データ解析は完了していない.今後も解析を継続する予定である.
|