研究課題/領域番号 |
05231217
|
研究種目 |
重点領域研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深尾 良夫 東京大学, 地震研究所, 教授 (10022708)
|
研究分担者 |
阿部 豊 東京大学, 理学部, 助教授 (90192468)
|
研究期間 (年度) |
1993
|
研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1993年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
|
キーワード | マグマ / あぶく / 対流 / プリューム |
研究概要 |
平成5年度は、マグマ溜まり内部の微粒子(気泡・結晶)の上昇・沈降によって引き起こされる流体運動について、非定常非線形数値解法の改良および大型計算機によるシミュレーションを行った。その結果、マグマ溜まりの運動のダイナミクスとマグマ混合について以下の示唆を得た。 (1)マグマの粘性が極端に低い場合、もしくは気泡や結晶のサイズが大きい場合にはこれら微粒子はマグマ中を静かに素通りするだけマグマ溜まり全体におよぶ対流は励起されない。このような状況では、マグマは気泡の運度によって乱されにくく、混合のスケールの小さな比較的均質なマグマが維持・保存されることが期待される。これは、中央海嶺から低粘性のバサルトが連続的に生成・噴出される状況などにあてはまるかもしれない。 (2)マグマの粘性が比較的高い、あるいは気泡・結晶のサイズが小さい場合には、気泡や結晶の水平分布のゆらぎによってマグマ溜まり全体におよぶ対流が励起される。このときマグマ溜まり内部で鉛直方向にマグマ混合が促進されることが期待される。 (3)マグマの粘性がかなり高い場合、もしくは気泡・結晶のサイズがごく小さい場合、気泡・結晶はもはや個々に移動することができず集積し、塊状のプリュームを形成して移動する。このときプリューム自体は気泡・結晶のミクロ運動(ストークス運動)よりもはるかに高速で運ばれ得る。このときマグマ混合のスケールは大きくなり不均質なマグマが生成されることが予想される。 この状況は、島弧火山では一般的に見られる、高粘性のデイサイト質マグマの底部からバサルト質マグマが供給され発砲・結晶化を起こしながらマグマ混合を起こす場合のメカニズムとなり得ると考えられる。特にこのメカニズムでは、個々の気泡・結晶がごく小さくてミクロな移動速度が小さい場合でも、巨視的には十分高速でマグマが輸送・混合され得る点で重要である。 またこれら微粒子の上昇・沈降が引き起こす流体運動は、それまで熱的には静かだったマグマ溜まりを再び不安定化させ、噴火のトリガーになり得ることも示唆している。今後は、外部に巨視的な流れ場(例えば熱対流やマグマ噴出に伴う流れなど)があった場合に、気泡・結晶のミクロな運動とどのように相互作用しながら新しい流れ場がつくられていくかについて数値実験を行う予定である。
|