研究概要 |
本年度は、超伝導性などの電気伝導特性を担っていると考えられるフラーレンアニオンラジカル塩に着目し、構造と物性との相関を解明するために、いくつかの単結晶を電解結晶成長法により育成し、X線結晶構造解析によりそれらの単結晶の構造を解明するとともに、電気伝導度などの物性を検討した。また、ESRによりフラーレン骨格の電子構造に関しても検討を進めた。設備備品で購入した実体顕微鏡は、不安定なフラーレンアニオンラジカル単結晶を取り扱えるように、不活性雰囲気下で操作ができるエアバッグ中に装備した。 1)C_<60>アニオンラジカルを崇高いカチオン(N(P(C_6H_5)_3)_2^+)で安定に単離することに始めて成功した。(J.Am.Chem.Soc.,115,1185-87(1993).)現在、結晶構造解析は最終的な段階であり、単結晶構造が明らかになった。(投稿予定)また、ESRスペクトルが温度変化・時間経過により著しく変化することを見いだしており、解明を進めている。 2)超伝導特性を示すアルカリ金属-フラーレン化合物に関する研究では、今回初めて液相から電解結晶成長法によりC_<60>の分子性伝導体であるNa_xC_<60>(THF)_yを単結晶として得ることに成功した。室温での伝導度(約50 Scm^<-1>)は、170Kの金属-金属相転移後およそ1000 Scm^<-1>に上る高伝導性を示すことが観測され、これは格子定数の温度変化によく対応しており、高伝導相に転移するにつれて結晶格子の収縮をともなっていることが明らかになった。(J.Am.Chem.Soc.,116,(1994)印刷中.)現在、その他のアルカリ金属に関しても単結晶が得られており、これらについても結晶構造解析やESRスペクトルの解析を進めている。(投稿予定)
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