研究概要 |
触媒的不斉反応の分野で、不斉マイケル付加反応の開発はいまだ未解決である。特に、多くの種類の不斉炭素を簡便に構築できるプロキラルなマイケルアクセプターの反応にはほとんど成功例がない。本年度の研究では,アミノ酸金属塩を用いるカルボニルの新しい触媒的活性化法を用いて,プロキラルアクセプターへの活性メチレン化合物の不斉マイケル付加を検討した。 単純なマロン酸エステルの初めての不斉触媒的マイケル付加反応を開発した。合成容易で安価なアミノ酸Rb塩(5mol%)存在下で,マロン酸ジイソプロピルはエノン,エナールへ比較的高い不斉収率で共役付加する。鎖状の(E)-エノン、エナールは(S)-配置の付加物を与え、環状(Z)-エノンは(R)-付加物を与える。このことは、不斉誘起がプロキラルなアクセプターのエナンチオ面を区別して進行していると考えると、良く説明できる。活性中間体として、エノンとアミノ酸触媒から生成するイミニウム塩を考えた。すなわち,触媒は塩基として作用するのみでなく,アクセプターを活性化し,エナンチオ面を区別していることになる。アミノ酸金属塩にルイス酸と類似した触媒機能があるとみなすことができる。 本触媒はニトロ化合物の不斉共役付加にも利用できる。5-10mol%の触媒存在下、ニトロ化合物とエノンから、光学活性付加物が収率よく得られた。とくに、嵩高い三級ニトロ化合物を用いた場合に高い不斉誘起が見られた。たとえば、ニトロシクロヘキサンとシクロヘプタノンとの反応では、最高84%eeを達成した。生成物の絶対配置はマロン酸エステルの場合と同じで、どちらも同様な反応機構で進行していることを示している。
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