研究概要 |
ホルムアルデヒド-エン反応の不斉触媒化:イソカルバサイクリン合成 我々はすでに、光学活性ビナフトール-チタン(BINOL-Ti錯体)を不斉ルイス酸触媒としてグリオキシラートを親エン体とするカルボニル-エン反応の不斉触媒化に成功している。今回、ホルムアルデヒドを親エン体とするカルボニル-エン反応の不斉触媒化を検討し、(3-オキサ)イソカルバサイクリンの形式的全合成を行った。まず、対称な双環性エン基質を用い、不斉触媒的ホルムアルテヒド-エン反応による不斉非対称化について検討した。反応は錯体(R)-BINOL-TiのCH_2Cl_2溶液にエン体および親エン体を加え、-30℃で攪拌して行った。その結果、エナンチオ選択的に反応が進行し、(R)-BINOL-Ti錯体を用いると、11S-体のエン生成物が得られることが明らかとなった。そこでω-鎖を有する光学的に純粋なエン基質を用い、重複不斉誘導について検討した。キラル双環性エン基質は、光学分割したβ-ヒドロキシ酸にω-鎖を導入した後、数ステップで得られる。不斉触媒的ホルムアルデヒド-エン反応の結果、二重結合を位置選択的に6,9α位へ導入でき、(3-オキサ)イソカルバサイクリン合成の鍵中間体が得られた。 新規不斉触媒的カルボニル-エン反応の開発:イソカルバサイクリン誘導体合成 種々のα-鎖を有するイソカルバサイクリン誘導体の不斉合成を指向し、共役イナールを親エン体とする新規カルボニル-エン反応の不斉触媒化を検討した。まず、対称なエン基質について、この新規エン反応の不斉触媒化を検討した結果、このアルデヒドも十分なエン反応性を有し、対応するエン生成物を収率よく、しかも91%の6,9α位置選択性。88%eeR選択性で与えることを見い出した。そこで、ω-鎖を有するエン基質とのエン反応を行ったところ、対応するエン生成物が98%の6,9α-位置選択性、96%eeR選択性で高収率に得られた。得られたエン生成物をさらに種々の誘導体へと変換した。
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