研究概要 |
求電子的フッ素化に適した基質の合成に関しては、CFPA構造の異性体識別能を維持しつつも結晶性が高められた物質になることを念頭に、p-置換体3(X=NO_2,Br,OMe)を選択した。1からエステル2を合成し、種々の条件でカルボン酸3への誘導を試みたが、脱炭酸が観測された。そこで、1に対して二酸化炭素を用いる直接的カルボキシル化を施すことにより3を得た。次に3(X=H,OMe)と不斉補助基との縮合を行ったものの、目的とするアミド体4および6(X=H,OMe)の収率は非常に低いものであった。このように、当初予定した不斉補助基の導入が円滑に進行しなかった原因は、縮合相手のα-シアノフェニル酢酸構造にあると考えられたので、先に不斉補助基と縮合した後シアノ基を導入する別経路を考えた。 α-ブロモフェニル酢酸の塩化物と不斉補助基との縮合によって得た臭素化体をシアノ化してアミド体4および6(X=H)を合成した。この方法により不斉フッ素化に適した基質を得ることができたので、次に求電子様式のフッ素化反応を試みた。4のTHF溶液に0℃にて当量のNaHを加えることによりエノール体とし、室温にてフッ化過クロリル(FClO_3)を導入する方法により、目的とするフッ素化体5が得られた。同様の方法により6を不斉フッ素化反応に付したところ、不斉補助基がはずれたため、7は僅かしか得られなかった。得られた5の選択性(de値)および絶対構造に関しては目下それらの^<19>F-NMRに基づいて検討中であるが、図示されるような不斉空間の介在があるものと期待してる。
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