研究概要 |
本研究は長寿命化した分子ヘリシティを有する新規ルテニウム(II)錯体触媒を分子設計し、基質との直接的結合(配位など)を経ない遠距離相互作用による光触媒的不斉合成を試みた。分子力学解析から、DELTA-[Ru(Men-bpy)_3]^<2+>(Menbpy=4,4'-ビス[(1R,2S,5R)-(-)-メントキシカルボニル]-2,2'-ビピリジン)の分子構造は、DELTA-体のメンチル部位がC_3対称軸に対して反時計廻りのMinus分子ヘリシティ(M(C_3)-DELTA-型)を有することになり、4,4'-ビス[S(-)またはR(+)-1-フェニルエチルアミノカルボニル]-2,2'-ビピリジン(SまたはR-PhEtbpy)配位子を有するRu(II)錯体では、唯一安定な時計廻りPlusヘリシティのP(C_3)-LAMBDA-[Ru(S-PhEtbpy)_3]^<2+>とM(C_3)-DELTA-[Ru(S-PhEtbpy)_3]^<2+>構造が決定された。これらヘリカルRu(II)錯体の光化学的特性は、三重項Metal to Ligand Charge Transfcr (^3MLCT)-[Ru(bpy)_3]^<2+>(bpy=2,2'-ビピリジン)励起体に比して励起波長はほぼ同じであるが、励起寿命は長くなり、また光異性および光分解の量子収率は著しく低下して光安定性の向上がみられた。ヘリカルRu(II)錯体の不斉光触媒機能について、C_3軸対称のP(C_3)-DELTA,M(C_3)-LAMBDA-[Co(acac)_3](acacH=ペンタン-2,4-ジオン)の光学分割・不斉合成から調べると、とりわけM(C_3-DELTA-[Ru(Menbpy)_3]^<2+>はラセミ[Co(acac)_3]の消光反応よりも光学分割において基質分子認識力が強く発揮され、その他の触媒と同じくヘテロヘリカル(M(C_3))-PC-(_3))触媒・基質相互作用が優先される。^3MLCT Ru(II)錯体より生成したヘリカルRu(III)錯体は、[Co(acac)_3]の還元生成物Co(acac)_3(H_2O)/acacHの不斉酸化を触媒し、他のM(C_3型)触媒と同様にM(C_3)-DELTA-[Ru(Menbpy)_3]^<3+>はホモヘリカル対のM(C_3)-LAMBDA-[Co(acac)_3]を優先不斉合成する。不斉認識力序列 DELTA-[Ru(Menbpy)_3]^<2+>]>>LAMBDA)AまたはDELTA)-[Ru(S(またはR)-PhEtbpy)_3]^<2+>>>DELTA-[Ru(bpy)_3]^<2+>はC_3対称軸に対する触媒分子ヘリシティの拡がりに反映し、本反応は新規不斉増殖型光触媒反応であることが明白になった。
|