マンガン間距離を固定した2核錯体ので陽極酸化による酸素発生 植物の光合成反応中心に存在する酸素発生錯体は4核のマンガン錯体を反応中心に含み、2分子の水を4電子酸化し酸素分子を発生している。モデル錯体を設計する上でそれぞれ1個の水の配位したマンガンイオンが2電子酸化され、しかも酸素原子間距離が近接している場合酸素発生が可能となるものと考察に基づきモデル錯体を合成した。マンガンイオン間距離がMn‐O‐O‐Mn結合を形成するのに最適である構造をとることができるような錯体としてオルトフェニレンにより結合された各種のマンガンポルフィリンを合成した。この錯体においてはマンガンイオン間距離は約4.5Å程度であり上記のようなペルオキシ結合を形成するのに適当と考えられる。含水溶液中でこれらのマンガンポルフィリン2量体を触媒とし電気化学的に陽極酸化反応を行なったところ酸素発生が認められた。これらの錯体を含まない溶液中では酸素発生が認められず、H_2^<16>O‐H_2^<18>Oの1:1混合物を用いて同様の酸化を行なうと^<16>O_2・^<16>O・^<18>O・^<18>O_2が1:2:1の比で生成した。また回転電極を用いてこの反応をレビッチ式により解析したところ、反応に関与する電子数が4となった。以上の結果よりこの錯体を用いた酸化反応により、配位した水分子が4電子酸化を受け酸素発生をしていると結論付けられた。一方、この錯体よりマンガンイオン間距離が長い錯体を各種合成し酸化反応を検討したところいずれも酸素発生に対する活性は低くマンガンイオン間距離が酸素発生に重要なかぎであることが明かとなった。
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