研究概要 |
アルコール脱水素酵素(ADH)は,生体内でアルコールのアルデヒドあるいはケトンへの酸化反応の触媒として機能する酵素であり,反応基質と酵素の種類の組合せによっては,反応が可逆的に進行することが知られている。NAD^+依存のADH(EC1.1.1.1)とNADP^+依存のADH(EC1.1.1.2)を用い,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,およびアセトンの還元反応をNADHあるいはNADPHを還元剤として用いることによって行った。ADH(EC1.1.1.1)およびNADHを用いると,ホルムアルデヒドのメタノールへの還元反応が進行することを初めて見出し,またアセトアルデヒドのエタノールへの還元に対しても高い触媒能を有していることがわかった。いっぽうNADPHとADH(EC1.1.1.2)を用いると,アセトアルデヒドのエタノールへの還元とアセトンの2-プロパノールへの還元を行うことができた。これらの知見を基に,NAD^+およびNADP^+の還元反応によるNADHとNADPHの生成を電気化学的行い,それと上記の酵素反応を組合わせた電解反応システムの構築を行った。NAD^+とNADP^+の電解還元反応には,それぞれジアフォラーゼおよびフェレドキシン-NADP^+-リダクターゼを触媒に,そしてメチルビオローゲンを電子メディエータに用いた。ADH(EC1.1.1.1)によるホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの電解環元反応ならびに,ADH(EC1.1.1.2)によるアセトアルデヒドとアセトンの電解還元反応が迅速に進行し,変換効率および電流効率ともに100%が達成された。電解還元反応の際の反応速度の順番は,NADHあるいはNADPHを用いた化学的還元反応の反応速度の順番と一致したことから,電解反応において酵素上での反応基質の還元過程が律速段階となっていることを示唆する結果を得た。
|