研究概要 |
1.触媒的ヒドロホウ素化反応.H-B結合のロジウムやパラジウム錯体に対する酸化付加と生成した付加体のアルケン,アルキンへの挿入反応は触媒的ヒドロホウ化反応として知られている.我々はこの手法が従来の無触媒反応には見られない特異な立体選択性,位置選択性,官能基選択性を示すことを明かにしてきた.本研究ではアルキン,特にチオアルキン類の触媒的ヒドロホウ化反応を調査し,(β-アルキルチオ)ビニル型ホウ素化合物の簡便な合成法を開発した.触媒活性はNi>Pd>Rhの順であり,ニッケルに二座配位子であるdppeやdpppを組み合わせたとき最も高い収率,選択性が達成できた.反応は位置および立体選択的であり,また興味あることに触媒反応と無触媒反応では全く逆の位置選択性が得られた. 2.触媒的チオホウ素化反応.触媒的ヒドロホウ素化反応と同様にS-B結合の底原子価遷移金属錯体への酸化付加とそれに続く挿入反応は従来困難であったチオボランのアルケン,アルキンへの付加反応(チオホウ素化反応)を可能にすると考えられる.9-RS-9-BBNの末端アルキンへの付加反応をパラジウム触媒存在下50℃で行うと付加体である(β-アルキルチオ)ビニル型ホウ素化合物が高収率で生成した.反応は位置選択的であり常にホウ素原子は末端に付加する.またシス付加体のみを立体選択的に与えた.生成したビニル型ホウ素中間体はβ-チオ基により活性化されており,一般的なビニルホウ素化合物に比べ高い反応性を有する.たとえば,アルコールによるプロトン化分解やカルボニル化合物への1,2-付加反応を行う.また,クロスカップリング反応を組み合わせるとビニルスルフィド類が立体選択的に合成できた.
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