研究概要 |
有機金属試薬の酸素や窒素等のヘテロ原子への配位機能が中心金属の種類によって大きく変化することに着目し、基質の構造、ヘテロ原子の組み合わせによる影響を考慮しつつ用いる有機金属種を選択することにより種々のジアステレオマーを選択的に与える反応場を設計し、ジアステレオ面選択性の制御の展開をはかってきた。本研究ではエステルエノラートの(2S,3S)-1,4-ジメトキシ-2,3-ブタンジオールを不斉源として有する光学活性イミンへの付加反応においてエノラートの金属種を選択することによりジアステレオ面選択性を制御し、同一の出発物質から2-アゼチジノン環の各ジアステレオマーを与える反応場を設計し、両鏡像体を任意に合成できることを見いだした。すなわちαジ置換酢酸エノラートであるイソ酪酸エチルのLiエノラートの反応では(4S)-2-アゼチジノンを、またTiエノラートではジアステレオ面選択性の逆転した(4R)-2-アゼチジノンを選択的に得ることができた。α無置換酢酸エステルエノラートの場合はt-ブチルエステルエノラートを用いエノラートの金属種をLi,ZnClとかえ反応を行なうことにより(3S)-および(3R)-βのアミノエステルを作り分けることができ、t-Buエステルを加水分解した後、環化させることによりそれぞれ(4S)-および(4R)-2-アゼチジノン良好な収率で変換することができた。さらにα位に1個のアルキル、アミノ、およびハロゲン置換基を有する酢酸エステルエノラートの反応では、それぞれエノラート金属種を適切に選択することにより各々の異性体を選択的に合成することができた。 この手法は、有機および無機試薬の複合的な相互作用を解明し高度な選択性の制御に活用することができ、複数の不斉点を有する生理活性化合物等の選択的合成に極めて有効な手法であり、今後さらに利用されるものと期待できる。
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