研究概要 |
1.ホットカソードセルの製作 今年度ホットカソードを内部に設置できるパイレックス製(長さ1m,直径10cm)で7本の技管(試料導入,排気,フィラメントおよびその支持板固定用)を有するセルを製作した。ホットカソードとしては電子の出易いトリエーテッドタングステン線(直径0.5mm)を用いた。タングステン線はセル内上部に設置した厚さ1mmのステンレス板にとりつけたアルミナブッシングに挟み込んで固定した。セルの温度上昇を防ぐため,液体窒素を流せる銅板のジャケットを製作した。a^3ПCO,CO^+,SO,CS等の回転スペクトルを観測した。 2.ミリ波分光法によるラジカルおよびイオンの回転スペクトルの観測 ホットカソードセルを用いた場合との比較を行なうため,グロー放電セルをもつパソコン制御ミリ波分光器により,珪素および金属元素を含む不安定分子のマイクロ波スペクトルの検出を行なった。四臭化珪素のグロー放電により臭化珪素陽イオンのスペクトルを初めて見出した。この系において,この陽イオンが最も強いスペクトルを与えた。臭素および珪素の同位体種の回転スペクトルを振動励起状態まで含めて観測できた。また,臭素核の核四重極相互作用による回転線の分裂を観測できた。一方,三塩化アルミニウム蒸気をグロー放電し,準安定三重項一塩化アルミニウムの検出を試みていた際,放電プラズマによりステンレス電極板からたたき出されて生成した鉄原子を含むラジカルを検出した。このラジカルは6重項(^6Σ)であり,系内に含まれる原子などから考えて,一塩化鉄ラジカルと思われる。この電子状態は低エネルギー電子励起状態であると報告されている。
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