研究概要 |
1.正・負イオン飛行時間同時計測法による超励起状態の研究 N_2Oからの光励起イオン対生成(2体解離N_2^++0^-および3体解離N^++0^-+N)を観測した。光解離効率曲線上の25〜30eVに存在するピーク構造を解析し、これまで知られていなかったSIGMA対称性の2電子励起リュードベリ状態を検出した。量子欠損に基づいてこれらのピークを帰属した。さらに、3体解離過程に関する同時計測スペクトルのピーク形から、解離機構について議論した。窒素イオンはもともと分子の中央にあったN原子に由来すること、および2つの化学結合はほぼ同時に解裂することが明かなった。2.クラスターの励起状態とその自動イオン化の研究 液体ヘリウム冷却型高濃度クラスター源を軌道放射光施設に設置した。差動排気系が30Kまで冷却されたことを確認した。このクラスター源を使ってCO_2,Ar,Krクラスターを生成し、よどみ圧条件、強度、サイズ分布等を光イオン化法で検討した。現在、(CO_2)_2からの正負イオン対解離を調べている。3.希ガス固定からの、準安定原子の光誘起脱離現象に関する研究 Ne,Ar,Kr凝縮層またはそれらの混合体表面に軌道放射光を照射し、光誘起脱離で放出された準安定原子の運動エネルギーと角度分布を測定した。励起子の初期緩和機構と脱離機構について考察した。4.分子凝縮固体からの光誘起イオン脱離の研究に用いる装置の製作。飛行時間型質量分析装置を製作した。将来、検出部を位置敏感型に代えて、脱離イオンの運動エネルギー分布を測定する予定である。
|