我々は、超伝導体の転移温度での急俊な抵抗変化を利用した超高感度温度センサーを使った超高感度のX線分光器の開発を行なっている。今年度はアルミニウム超伝導薄膜の温度センサーを製作してその特性を調べ、新しいタイプのX線分光器の可能性を調べた。 温度センサーは0.3gのガラス板の上に幅約3mm長さ15mmのアルミニウム薄膜を蒸着して製作し、4端子法で抵抗の温度特性を測定した。抵抗は300Kで43Ωであった。超伝導転移温度付近では図に示すように、約7mKの温度幅で30ΩからゼロΩに抵抗変化をした。したがって、転移点近傍ではΔR/ΔT〜4×10^3ΩK^<-1>の値を持つことが明らかになった。この温度のセンサーの熱容量は約0.2mJ/mol/Kである。ここでエネルギー5.5MeVの粒子一個をセンサーが吸収した場合、温度センサーの抵抗変化は約3mΩ(δR/R>10^<-4>)と見積ることができる。したがってこの超伝導センサーでも粒子線を十分に観測できることが明らかになった。 そこで現在、この超伝導センサーを使った分光器用のクライスタットと温度コントローラーなどのエレクトロニクスを準備中である。また超伝導温度センサーについても、蒸着膜のパターンエッチングにより抵抗変化を数桁上昇させたり、超伝導転移温度の低い物質を使う等の検討を行なっており、来年度実行する予定である。
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